fbpx
  1. HOME
  2. ブログ
  3. どう変わる?公益法人の情報開示 ―「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」最終報告

どう変わる?公益法人の情報開示 ―「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」最終報告

disclosure

ディスクロージャー面の改正が必要な理由

公益法人は、税制優遇等を受けつつ不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するために公益目的事業を行っています。
そのため、公益法人が社会に対して広く情報開示を行うことは、説明責任の充実という観点から必要不可欠だと言えます。

さらに、「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」最終報告では、公益法人の柔軟・迅速な公益的活動の展開を可能とする財務規律の柔軟化や行政手続の簡素化・合理化を進めることが検討されています。
これは同時に、法人自身が一層の説明責任を果たすことが社会的要請になる、ということを暗に示していると思います。

これらを踏まえ、法人及び法人活動に対する国民の認知・理解の向上に向けて、「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」最終報告では、法人運営そのものの情報開示はもちろん、よりわかりやすい財務情報開示、開示された情報の利用・活用性の向上など、透明性の一層の向上に向けたディスクロージャー面の改正が盛り込まれています。

法人運営に関する情報開示の充実

「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」最終報告では、個人情報の保護等に配意しつつ、開示情報の拡充等について提言されています。
社会環境の変化や、同最終報告で示された財務規律の柔軟化や行政手続の簡素化・合理化も踏まえ、法人運営の一層の透明性の向上による国民からの信頼確保に向けた動きと言えるでしょう。

(1)開示情報の拡充
個人情報の保護等に配意しつつ、新たに開示する情報として次の2点の追加が検討されており、内閣府令改正が予定されています。なお、法人が適切に対応できるよう、所要の経過措置が設けられる見通しです。

①理事会での承認が必要な役員の利益相反取引、法人と密接な関係を有する特別の利益供与が禁じられている者との取引等、透明性の確保が必要な取引情報・役職ごとの役員報酬等、構成員への利益分配について疑念を招かれないようにするために必要な情報
②テロ資金供与等対策のために必要な海外送金に関する情報

(2)財産目録等の公表(努力義務)
法人の財産目録等(拡充した開示情報を含む)の情報開示については、現在の「事務所における備置き」・「閲覧請求に対応」から、「ウェブサイト上で」・「広く公表する」努力義務を定め、広く公表する形へと転換を促すように関連法を改正する予定です。
併せて、行政庁が法人から提出を受けた財産目録等について公表するような改正も検討されています。

わかりやすい財務情報の開示

公益法人は、収益事業等と公益目的事業の会計を区分経理することが求められており、財務諸表において公益目的事業会計・収益事業等会計・法人会計(管理業務等に関する会計)別の内訳表を作成することで対応するのが原則です。
ただし、収益事業等を実施していない法人など一部の法人については、その負担に鑑み、貸借対照表や損益計算書の内訳表を作成しないことを認めており、結果として法人によって開示される財務情報が異なる、という分かりづらさがあります。

また、行政庁は、公益法人の財務基準適合性等を確認するため、毎事業年度の定期提出書類において、各種の所定の様式である「別表」の作成提出を求めているが、法人にとって煩雑な作業となっており、記入誤りにもつながっています。
特に、課題が多いとされているものが別表Hです。

別表Hは、もし公益法人が認定取消し等を受けた場合に、他の類似の事業を目的とする公益法人等に贈与すべき「公益目的取得財産残額」について、これに準ずる額を算定するための別表で、定期提出書類として毎年度算定することが求められています。
しかし、実現の可能性が低い認定取消し等のために毎事業年度複雑な計算を正確に行うことが必要となることはもちろんのこと、計算に当たっての法令解釈に様々な見解が見られるなど、法人、行政庁ともに多大な負担となっています。
また、当該残額が過少に評価されることは法令の趣旨に照らして適切ではなく、行政として当該残額の把握方法の見直しが求められています。

「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」最終報告では、国民に分かりやすく財務情報を開示するため、損益計算書・貸借対照表の内訳表の作成による区分経理を推進する方向性が示されています。
また、定期提出書類の簡素化等も併せて進めていく予定です。

(1)全ての公益法人に対し、公益目的事業会計、収益事業等会計、法人会計の区分経理を求めるように、関連法令を改正する予定です。具体的なポイントは次の通りです。(すでに何度も検討されていることの繰り返しになりますが、最終報告にも盛り込まれています)

①法人が設定し認定を受けている「公1」・「公2」等の事業ごとの収支については、法人の損益計算書(内訳表)により情報開示する。
②遊休財産(使途不特定財産)が上限額を超過した場合、貸借対照表の内訳表により財務状況を透明化し、超過額が公益目的事業のために使用されることを明確化する。

なお、実施に当たっては、所要の経過措置を設けるとともに、小規模法人等における区分経理の負担を軽減する方策や、行政による必要な支援策も検討されます。

(2)現行の定期提出書類等における各別表については、できる限り損益計算書・貸借対照表の内訳表等で代替することで廃止又は記載事項を簡素化するように、各様式や会計基準を変更する予定です。

(3)公益目的取得財産残額については、その前提となる公益目的事業財産とともに概念・定義をわかりやすく再整理し、別表Hの代わりに、貸借対照表内訳表の公益目的事業会計を基礎とした簡素な把握方法とする方向で関連法令の改正が検討されています。

法人情報の利活用の向上

公益法人に関する情報は、行政庁ポータルサイト(公益法人 information)の各ページや各公益法人のホームページにそれぞれ存在しており、一覧性や情報を活用する際の利便性に欠けていることが課題でした。

「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」最終報告では、国民への情報提供及び社会的な評価・チェック機能を向上させる観点から、一覧性・利便性の高い法人情報の提供を進めるため、一元的なプラットフォームを整備することが検討されています。

具体的には、内閣府が公益法人の情報を一元的に閲覧・利用できるプラットフォームを整備し、都道府県とともに運用することが検討されています。
当該プラットフォームは、利用者のニーズを踏まえ、利用価値の高い情報が提供されるように、整備に当たっては、法人・経済界等との対話を通じて適時、かつ継続的に改善を続けていくこととされています。

また、公益法人のガバナンスに関する積極的な取組やインパクト測定・マネジメント(※)等の先進的な取組について、法人・経済界等と連携して、他の法人の取組の参考となる情報を発信し、その普及も図っていきます。

(※)インパクト測定・マネジメント…事業が社会的課題の解決に及ぼす正負のインパクトを定量・定性的に測定し、測定結果に基づいて事業改善や意思決定を行うことを通じて、正のインパクトの向上、負のインパクトの低減を目指す日々のプロセスのこと。


  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

関連記事

これまでの記事

月を選択