特定一般社団法人等の理事が亡くなった場合、法人に相続税が課税される?!
【ポイント】
平成30年度の与党税制改正大綱で、特定一般社団法人等の理事が死亡した場合、その特定一般社団法人等が、一定金額をその被相続人(亡くなった理事の方)から遺贈により取得したものとみなして、その特定一般社団法人等に相続税が課税されることとが明記されました。
平成30年度の与党税制改正大綱で、特定一般社団法人等の理事(相続開始前5年以内に理事だった方も含みます)が死亡した場合、その特定一般社団法人等が、一定金額をその被相続人(亡くなった理事の方)から遺贈により取得したものとみなして、その特定一般社団法人等に相続税が課税されることが明記されました。
まず、人ではない一般社団法人等に相続税が課税される、ということに違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれませんね。
そもそもの話になりますが、一般社団法人等には遺言書で財産を引き継がせることができるため、課税逃れを防ぐために相続税が課されることもあるのです。
さらに、今回の改正ででてきた言葉について、その意味を説明いたします。
■特定一般社団法人等とは?
次のいずれかに該当する法人をいいます。
(1)相続開始の直前において、その法人の役員総数の2分の1超が同族役員だった場合。
(2)相続開始前5年以内に、その法人の役員総数の2分の1超が同族役員だった時期が3年以上の期間であった場合。
■同族役員とは?
一般社団法人等の理事のうち、被相続人、その配偶者又は3親等内の親族その他当該被相続人と特殊の関係がある者(たとえば被相続人が会社役員を務める会社の従業員など)のことをいいます。
■遺贈により取得したものとみなす「一定の金額」の計算方法
該当する特定一般社団法人等の純資産額を、その理事が死亡したときにおける同族役員(亡くなった理事も含む)の数で割り算した金額が、遺贈されたものとみなされます。
たとえば、純資産額5000万円の特定一般社団法人で、同族役員数が5人だった場合、
5000万円÷5人=1000万円が遺贈されたものとみなされます。
一般社団法人を設立し、相続税対策とするスキームはかなり流行していました。
今後、対策を考えるとしたらば…
(1)同族役員の割合を1/2以下にする
(2)同族役員数を増やす(遺贈による取得の金額を減らす方向にする)
(3)若い理事に入れ替えるなど、理事の死亡リスクを減らす方向を考える
(4)法人の純資産額を減らす(赤字を出すなど)
などが考えられます。
しかし、(1)は相続税対策が目的であった場合は実現が難しい可能性があります。
(2)は(1)の次善策ではありますが、遺贈はゼロにはなりません。
(3)は、あくまでも死亡リスクを減らすということです。また、相続開始前5年以内に理事だった方はこの制度の対象ですので、「理事を退任したからこの制度は関係ない」となるまでに5年かかる点にご注意ください。
(4)は、つまるところ「借金経営・赤字経営」するということであり、相続税対策としてあまり健全でない法人運営をすることは結局どうなのか?を冷静に判断する必要があるでしょう。
相続税対策スキームとして一度動き出してしまった以上、後に引くことは難しいかと思います。
様々な対策が考えられる中、ベストな方法は何か、次の一手は慎重に考えて行動してください。
※与党税制改正大綱とは、次の年度の税制改正の主要項目や今後の税制改正に当たって、与党の基本的な考え方を示したものです。そのため、現時点では決定事項ではありません。
正式な法令等の改正内容やタイミングにご注意ください。
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