どう変わる?!遊休財産(使途不特定財産)の適正管理 ―「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」最終報告
現行の「遊休財産規制」が抱える課題
公益法人が自由に使える財産に対する財務規律として「遊休財産規制」が設けられています。
公益法人が一定程度自由に使用・処分できる財産を確保することは、社会経済情勢の変化等に対応しつつ、安定した法人運営を継続するために必要なことです。
一方で、公益目的事業の実施とは関係なく財産が法人内部に過大に蓄積されること(死蔵)は、公益法人としては避けたいところです。
「遊休財産規制」は、認定法上、公益法人の各事業年度の末日における遊休財産額がその年度の公益目的事業の実施に係る費用の額を超えないことという制限を言います。
しかし、実際の公益法人運営上、安定した法人運営の継続や不測の事態に備えるために必要な財産は、法人の事業内容や規模等によって異なり、公益目的事業費1年相当分という上限を超えた保有が必要になることは、少なくありません。
また、突発的な理由により例年並みの事業を実施できないことも、多々あります。近年では、新型コロナウイルス感染症の大流行により、公益法人の活動自体が大幅に制限せざるを得ない状況がありました。
変化の激しい社会情勢から、保有が認められる上限額の急激な変動や、上限額となる当該事業年度の事業費が事業年度末まで確定しないなど、法人にとって予見可能性が低い枠組みとなっていた点は大きな課題でした。
いずみ会計でも、公益法人の顧問先様から毎年、たくさんのご相談をいただくポイントの1つであり、特にコロナ禍では非常に頭を悩ませる財務規律でした。
「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」最終報告では、法人の経営判断で必要な財産を確保し、不測の事態に対応できる安定した法人運営を可能にするため、法人自身が財務状況等を透明化し国民への説明責任を果たすという考えの下、現行の公益目的事業費1年相当分という上限額を超過した保有について、柔軟化する検討がなされています。
また、「上限額」の算定方法については、予見可能性の向上や短期変動の影響の緩和という観点から見直しが行われます。
「上限」(公益目的事業費1年相当分)超過の取扱い
「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」最終報告では、公益法人の各事業年度の末日における遊休財産額が、その年度の公益目的事業の実施に係る費用の額(=公益目的事業費1年相当分)を超えた場合、次の3つの点を明らかにするように求めています。
(1)遊休財産(使途不特定財産)が合理的な理由により上限額を超過した場合、法人自ら、「超過した理由」及び「超過額を将来の公益目的事業に使用する旨」を行政庁の定める様式に記載し、開示することで明らかにする。
(2)貸借対照表の内訳表により、財務状況を透明化し、超過額が公益目的事業のために使用されることを明確化する。
(3)翌事業年度以降も上限額を超過している状態が継続している場合、そのことに引き続き合理的な理由があるか、また超過額の公益目的事業への使用状況等をフォローアップする。
これらの改正ポイントに対して、必要な法令・ガイドライン・会計基準を順次、改正する予定となっています。
「上限」額の算定方法について
現行の「遊休財産規制」は、認定法上、公益法人の各事業年度の末日における遊休財産額がその年度の公益目的事業の実施に係る費用の額を超えないこと、とされています。
「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」最終報告では、その上限額の基準となる1年相当分の公益目的事業費について、現行の「当該事業年度の公益目的事業費」から、「前事業年度までの5年間の公益目的事業費の平均額」に改めることが盛り込まれました。
また、法人の公益目的事業の規模を表す指標として直近の公益目的事業費がより適切である等の場合は、法人においてその理由を明示した上で、「当該事業年度の公益目的事業費」又は「前事業年度の公益目的事業費」を選択することもできるようになる予定です。
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