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どう変わる?!収支相償原則 ―「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」最終報告

収支相償原則

収支相償原則、よくある誤解と使いにくさの原因

収支相償原則は、フローの面からアプローチした公益法人の財務規律であり、公益法人の皆様が「これでいいのだろうか?」と頭を悩ませてきた財務規律の1つではないでしょうか。
今回の「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」最終報告では、収支相償原則について呼称(ガイドライン)も含め抜本的に見直すことが報告されています。

もともと「収支相償原則」は、公益目的事業の収入と適正な費用を透明化し比較することで、収支差額が生ずる事業年度が存在すること自体は問題としないものの、それが恒常化しない収支構造であることを制度上確保し、公益目的事業に充てられるべき財源の最大限の活用を促す規律です。

ただ、これを「公益目的事業は単年度の収支赤字にしなければならない」という誤解をされている方が未だにいらっしゃいます。

収支均衡の判定方法にも、課題があります。
収支均衡の判定では、過去の赤字が考慮されないため、公益目的事業を見る視点が短期的になりがちです。
また細かな事業単位ごとの赤字が求められることから、「法人全体としての効果的な財源の活用」という重要なポイントに目が行き届かない、という問題もあります。

収支相償原則への対応として認められている特定費用準備資金の積立てや寄附金の「指定正味財産」への計上も、使途を詳細・具体的に特定することが求められ、対応策としては使い勝手の悪さが課題でした。

「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」最終報告では、法人の経営判断で財源の配分を行い、公益目的事業への効果的活用を促進するため、「収支相償原則」について、呼称(ガイドライン)も含め抜本的に見直すことが明記されています。

収支相償原則は「中期的な収支均衡」に―呼称と制度が変わる

「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」最終報告によると、「公益目的事業の実施に要する適正な費用を償う額を超える収入を得てはならない」とされている現行の収支相償原則の呼称を「中期的な収支均衡」とする見直しが盛り込まれました。
制度的にも、公益目的事業の収入と適正な費用について中期的に均衡を図る趣旨が明確となるように、必要な法改正をする予定です。

「中期的な収支均衡」の判定は、公益目的事業全体について、過去に発生した「赤字」も通算した収支差額に着目して行う、とされています。
その際、中期的な収支均衡の対応策として「公益充実資金(仮称)」の積立てを費用とみなし、その上でなお「黒字」が生じる場合は、中期的に均衡状態を回復するものとするように内閣府令・ガイドライン等を見直します。
ちなみに、収支均衡の判定及び均衡状態を回復する際の「中期的」は、5年間になる見通しです。

なお、法人が設定し認定を受けている「公1」・「公2」等の事業ごとの収支については、法人の損益計算書(内訳表)により情報開示することとします。構造的に収入が費用を上回る(黒字)事業がある場合は、行政庁において当該事業の公益性の確認等を行う予定です。

「公益充実資金(仮称)」の創設

収支相償原則の下では、収支相償の判断は、事業単位(第一段階)と全体(第二段階)の2つが必要(事業がひとつの場合は第二段階からの判定)でした。
第二段階で収益>費用となった場合、特定費用準備資金の積立や資産取得資金の積立などの対応により、中長期的に収支が均衡することが確認されれば収支相償を満たすものとされていました。

「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」最終報告では、公益目的事業に係る従来の「特定費用準備資金」及び「資産取得資金」を包括する資金「公益充実資金(仮称)」を創設するとされました。

当該資金の積立ては、将来の公益目的事業の発展・拡充を積極的に肯定する観点から「中期的な収支均衡」の判定において費用とみなされます。

この資金は、法人の実情や環境変化に応じた柔軟な資金管理が可能となるように、細かな事業単位ではなく大括りの設定(「公1」・「公2」等の事業単位を横断する使途の設定も可)や、現段階では認定されていない将来の新規事業のための資金の積立てなど、これまで以上に柔軟な設定ができるようになります。

また、資金の積立て及び使用・取崩しの状況は、法人において情報開示することも併せて、内閣府令・ガイドライン・会計基準等を改正する予定です。

「指定正味財産」の使途制約範囲の緩和も!

公益法人のフロー面の財務規律緩和について、「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」最終報告ではもう1つの改正ポイントが示されています。

寄附者が使い道を指定した寄附を受けた場合、その寄附金は「指定正味財産」に繰入れられることになります。
この寄附金の使途の「指定」について、最大で「法人の公益目的事業全体」とする指定も可能になるよう、ガイドラインや会計基準が改正される見通しです。

これによって、寄附者の意思確認を容易化しつつ、法人の公益目的事業に広く活用できるようになることが期待されます!


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